自動車地図

変わる? 世界の自動車地図/2 自動車が売れない! アメリカの場合

電気自動車、量販のしくみ

世界一の自動車大国、アメリカのビッグスリー(自動車大手3社)が赤字に苦しみ、倒産の心配さえささやかれている。金融危機と景気の悪化でアメリカでは日本以上に車が売れなくなったが、実は日本の小型車におされてアメリカ車がふるわない状況が前から続いていたのだ。アメリカ政府はビッグスリーを助けるために国のお金をつぎこむ考えだが、経営を立て直すことができるかどうか、疑問という声も強いようだよ。イラスト・内山大助ビッグスリー……ゼネラル・モーターズ(GM)、フォード・モータークライスラーの3社をまとめた呼び方。いずれもデトロイト市周辺に本社を置く。フォード、クライスラーは世界販売台数でトヨタ自動車に抜かれ、最大手のGMも2008年は世界販売トップの座をトヨタにゆずる見通し。GMは08年9月末時点で借金が資産を599億ドル(約6兆円)も上回っている。
■もうけを生む大型車に頼りすぎたビッグスリーの主力車は、ピックアップトラック(PUT)と呼ばれる小型トラックや大型のスポーツタイプ多目的車(SUV)だ。PUTは農作物の運搬用に開発されたが、乗用車としても人気が高い。どちらも排気量が5000CCをこす大きなエンジンを積んでいる。大きな車はもうけも大きく、ビッグスリーの利益の源だった。一方、燃費のいい小型車の開発はうまくいかず、経営は大型車頼みだった。
■ガソリン値上げが大型車を直撃大きなエンジンを積んだ車は、燃料のガソリンをがぶ飲みする。ガソリンの値段が安いときは、それでもよかった。しかし、原油の値上がりで、燃費の悪い大型車は敬遠され、日本車などの小型車人気がいっそう高まった。アメリカでふるわないからといって、大型車を輸出に回すことは難しい。日本やヨーロッパではもっと売れないからだ。大型車の不振がビッグスリーの経営を一気に苦しくした。■環境重視の流れに乗りおくれる地球環境問題への関心が高まったことも、大型車離れを進めている。トヨタ自動車ハイブリッド車プリウス」がアメリカで絶好調なのは、二酸化炭素(CO2)の排出が少なく、環境にやさしい車だからだ。「プリウス」におくれをとったビッグスリーは、ハイブリッド車での巻き返しや排ガスの出ない電気自動車の開発を強化している。しかし、経営難で開発資金にゆとりがなくなっている。ハイブリッド車……ガソリンエンジンと電気モーターを組み合わせて走る車のこと。

[引用元:毎日新聞]